本には書けない話|13歳からの進路相談 著者・松下雅征のブログ

学校って無理してまで行くところなの?|本には書けない話|13歳からの進路相談 著者・松下雅征

5月29日に出した新刊『転校の教科書~学校にモヤモヤを感じたら読む本~』(通称、転校本)には、「みんなの転校体験談」という章があります。実際に転校を経験した子たちに話を聞いて、漫画イラストレーターの川口真目さんと一緒に、漫画にしてまとめたものです。

転校本に掲載している「みんなの転校体験談」、1話まるごと紹介します。 今日は、三人目。Aさん(仮称)の話です。

今回は、これまでと少しちがって、Aさん本人ではなく、お母さんが語ってくれた物語です。

 松下 雅征(まつした まさゆき)

Aさんは、中高一貫校から特認校、全日制から通信制へと、二度の転校を経験した子です。いまは通信制高校に通いながら、フリースクールでアルバイトもしています。まずは、お母さんが語る物語を漫画でどうぞ。読み終えたあとに、私が感じたことを少しだけ書きました。

 

ここからは、私がこの話を聞いて感じたことです。

「あたりまえ」が、子どもを追い詰める

Aさんは、小さいころからよく笑い、友だちにも恵まれていた。中学受験にも合格して、家族みんなが新しい生活を楽しみにしていた。それなのに、入学して半年もしないうちに、少しずつ学校に通えなくなっていきます。

私が考えさせられたのは、Aさんを追い詰めたものが、誰かの悪意ではなかったことです。「せっかく受験したんだから」「6年間通うと約束したんだから」。お父さんの言葉も、入学のときに書いた誓約書も、Aさんを思えばこそ、そして「学校には行くのがあたりまえ」と信じていたからこそのものでした。でも、その「あたりまえ」が、Aさんを栄養失調になるまで追い詰めてしまった。

お父さんが変わったのは、お医者さんの「命にかかわる」という一言でした。そして、お母さんのなかの「あたりまえ」が崩れたのは、Aさんの親友が病気で亡くなったこと。学校に行くより前に、生きて、元気でいてくれることがある。そう気づいたとき、お母さんは「学校って無理してまで行くところなの?」と、はじめて問い直せました。

担任の先生は、「成績がつけられません」「登校してください」と言いました。将来のAさんを思っての言葉だったかもしれません。でも、その言葉は、いまのAさんを見ていなかったんだと思います。

 

環境と人が合えば、その子らしくいられる

転校したAさんを迎えたのは、1学年に4人という小さな特認校でした。のびのびした雰囲気のなかで、Aさんは少しずつ笑顔を取り戻していきます。お母さんは、こう振り返っていました。「学力よりも、環境と人が合う場所で選んだほうがよかった」。学校が変わっただけで、Aさんは、Aさんらしく生きられるようになった。

もうひとつ大切だと思うのが、二度目の転校は、Aさん自身が選んだことです。通信制高校に通い、フリースクールでアルバイトを始めたAさんは、「人の役に立てるってうれしい」と笑う。一度目は親が選びましたが、二度目はAさんが、自分で自分の場所を選び直しました。

学校が合わないということは、まわりと自分のあいだに「ちがい」があるということです。でも、そのちがいは悪いことじゃない。Aさんは、自分に合う環境を選び直すことで、自分らしくいられる場所にたどり着いたんだと思います。

今日も松下のブログを読んでくれてありがとうございます。『一番頑張ったのは娘だとわかっているけれど、親も本当に辛かった。親は未来を見てしまう。娘は「いま」を見たいのに。』これは転校本を読んだ読者(子どもの転校を経験した保護者)の感想です。子どもの「いま」を見る。言葉でいうのは簡単ですが、実際に、その場に立つと、どうしても難しいですよね。