学校って無理してまで行くところなの?
5月29日に出した新刊『転校の教科書~学校にモヤモヤを感じたら読む本~』(通称、転校本)には、「みんなの転校体験談」という章があります。実際に転校を経験した子たちに話を聞いて、漫画イラストレーターの川口真目さんと一緒に、漫画にしてまとめたものです。
転校本に掲載している「みんなの転校体験談」、1話まるごと紹介します。 今日は、三人目。Aさん(仮称)の話です。
今回は、これまでと少しちがって、Aさん本人ではなく、お母さんが語ってくれた物語です。
松下 雅征(まつした まさゆき)
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Aさんは、中高一貫校から特認校、全日制から通信制へと、二度の転校を経験した子です。いまは通信制高校に通いながら、フリースクールでアルバイトもしています。まずは、お母さんが語る物語を漫画でどうぞ。読み終えたあとに、私が感じたことを少しだけ書きました。 |










ここからは、私がこの話を聞いて感じたことです。
「あたりまえ」が、子どもを追い詰める
Aさんは、小さいころからよく笑い、友だちにも恵まれていた。中学受験にも合格して、家族みんなが新しい生活を楽しみにしていた。それなのに、入学して半年もしないうちに、少しずつ学校に通えなくなっていきます。
私が考えさせられたのは、Aさんを追い詰めたものが、誰かの悪意ではなかったことです。「せっかく受験したんだから」「6年間通うと約束したんだから」。お父さんの言葉も、入学のときに書いた誓約書も、Aさんを思えばこそ、そして「学校には行くのがあたりまえ」と信じていたからこそのものでした。でも、その「あたりまえ」が、Aさんを栄養失調になるまで追い詰めてしまった。
お父さんが変わったのは、お医者さんの「命にかかわる」という一言でした。そして、お母さんのなかの「あたりまえ」が崩れたのは、Aさんの親友が病気で亡くなったこと。学校に行くより前に、生きて、元気でいてくれることがある。そう気づいたとき、お母さんは「学校って無理してまで行くところなの?」と、はじめて問い直せました。
担任の先生は、「成績がつけられません」「登校してください」と言いました。将来のAさんを思っての言葉だったかもしれません。でも、その言葉は、いまのAさんを見ていなかったんだと思います。
環境と人が合えば、その子らしくいられる
転校したAさんを迎えたのは、1学年に4人という小さな特認校でした。のびのびした雰囲気のなかで、Aさんは少しずつ笑顔を取り戻していきます。お母さんは、こう振り返っていました。「学力よりも、環境と人が合う場所で選んだほうがよかった」。学校が変わっただけで、Aさんは、Aさんらしく生きられるようになった。
もうひとつ大切だと思うのが、二度目の転校は、Aさん自身が選んだことです。通信制高校に通い、フリースクールでアルバイトを始めたAさんは、「人の役に立てるってうれしい」と笑う。一度目は親が選びましたが、二度目はAさんが、自分で自分の場所を選び直しました。
学校が合わないということは、まわりと自分のあいだに「ちがい」があるということです。でも、そのちがいは悪いことじゃない。Aさんは、自分に合う環境を選び直すことで、自分らしくいられる場所にたどり着いたんだと思います。
今日も松下のブログを読んでくれてありがとうございます。『一番頑張ったのは娘だとわかっているけれど、親も本当に辛かった。親は未来を見てしまう。娘は「いま」を見たいのに。』これは転校本を読んだ読者(子どもの転校を経験した保護者)の感想です。子どもの「いま」を見る。言葉でいうのは簡単ですが、実際に、その場に立つと、どうしても難しいですよね。
この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡市在住、一児の父。早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。偏差値のレールを走った学生時代。それでも消えなかったのは、漫画家になる夢を手放した中学時代の違和感。この原体験が、のちの起業の原点となる。教育系上場企業、コンサルティング会社を経て独立。「ちがいを、描け。」をミッションに掲げ、2022年に株式会社ユイロを創業。同年、
ユイロ高等学院を創立。2026年4月に月額定額型の新サービス「
家庭教師のユイロ」をリリース。「選び直せる学校」や「勉強を教えない家庭教師」を通じて、一人ひとりのちがいを起点に進路を描く新しい教育の文化づくりに取り組む。
慶應義塾大学名誉教授・武蔵野大学ウェルビーイング学部長である前野隆司教授との共同研究により、自律度を可視化する独自メソッド「ユイロ式自律度診断」を開発。
著書『13歳からの進路相談』シリーズ(すばる舎)は累計16,000部突破、全国の学校や図書館で多数採用。2作目『13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編』は紀伊國屋書店 総合週間ランキングで玉川高島屋店1位、新宿本店2位を獲得。2026年5月29日にはシリーズ3作目『転校の教科書』を発売予定。
東京・世田谷で小中学生向けの無料プログラミング部活動を展開する一般社団法人セタプロ・代表理事を務める。
著書:『
13歳からの進路相談(すばる舎)』、『
13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』、『
転校の教科書(すばる舎)』
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はじめて「学校が楽しい」と思いました。