本には書けない話|13歳からの進路相談 著者・松下雅征のブログ

「高校を辞めたい」と思ったら。退学の前に、転校先を決める|本には書けない話|13歳からの進路相談 著者・松下雅征

「いまの学校が合わなくて、高校の転校を考えています。学校がしんどそうなので、このまま退学させてもいいですか?」

夏休みの終わりが見えてくるこの時期、こうしたご相談が増えます。文面はいろいろですが、共通しているのは「本人がしんどそうだから、一日も早く楽にさせてあげたい」という気持ちです。

 松下 雅征(まつした まさゆき)

今日は、「このまま退学させてもいいですか?」というご相談に、お答えします。結論はシンプルで、「順番」の話です。

退学の前に、「休む」という選択

もしも、いまの同級生と同じタイミングで卒業を目指したいなら。退学や休学を決める前に、まず「学校を休む」という選択を考えてみてほしいんです。

ここでいう「休む」は、ふつうの欠席のことです。休学の届けを出すのではなく、籍はそのままにして、欠席する。

学校は休んだままでいい。籍だけ残して、転校先を探しはじめる。転校先が決まってから、いまの学校を離れる。この順番だと、卒業のタイミングを守りやすくなります。

大人の転職と、似ているんですよね。「次の職場が決まる前に、いまの会社を辞めないほうがいい」とよく言われます。辞めた瞬間に、収入が途切れるからです。高校の場合、途切れるのは「在籍期間」。あまり知られていませんが、これが卒業のタイミングを左右します。

休んでいても、在籍期間は続いている

高校を卒業するための条件は、全日制でも通信制でも共通です。

・在籍期間:3年以上
・単位修得:74単位以上
・特別活動(ホームルームや学校行事など):30単位時間以上

この3つです。

そして転校の場合、前の学校での在籍期間と修得した単位は、次の学校に引き継げます。2年生の秋に転校しても、1年生からやり直しにはなりません。前の学校で過ごした時間が、そのまま卒業までの持ち時間として数えられるんです。

ところが、転校先が決まる前に退学してしまうと、在籍が途切れます。退学してから次の学校に入るまでの空白の期間は、在籍期間として数えられません。休学も、学校によっては在籍期間の扱いが変わることがあります。その結果、同級生が卒業していく春に、在籍期間があと少しだけ足りない、ということが起こります。

同じ「学校に行かない」でも、「休む」と「退学・休学」では、あとに残るものがちがいます。教室に入らなくても、制服を着なくても、籍が残っている限り、在籍期間は続いています。だから、休んだままでいいんです。

転校を決める前に、探しはじめていい

もう1つ、知っておいてほしい原則があります。転校を考えはじめたら、動き出しは早いほうがいい、ということです。

多くの通信制の学校は、年度の途中からの転校を受け入れています。ただ、時期が遅くなるほど、その年度の単位を取るための条件が厳しくなっていきます。とくに3年生の後半になると、同級生と同じ春に卒業することが難しくなる学校が多くなります。

「まだ転校すると決めたわけじゃないし」と、動き出しをためらう方も多いです。でも、探すことと決めることは、別なんです。情報だけ先に集めて、「いざとなったら、ここに移れる」という状態をつくっておく。移るかどうかは、それから決めればいい。

学年別・時期別のくわしい仕組みは、『転校の教科書』(2026年5月29日発売)にまとめています。転校する人のための本というより、転校しない人も「こんな選択肢がある」と知っておくと気持ちが楽になる、という本です。

それでも、すぐにやめたい方へ

ここまで順番の話をしてきましたが、正直に言うと、私はこの話をするたびに、少し緊張します。「しんどくても籍だけは守って」という、我慢の話に聞こえていないかなと。だから最後に、この順番がしんどい方への話をさせてください。

「学校を休みながら、転校先を探す」。言葉にすると簡単ですが、休むのって、しんどいんですよね。

まわりは学校に行っているのに、自分だけ休んでいる。その状態そのものがしんどい。毎朝「今日は行く?行かない?」の葛藤をくり返すのがしんどい。休んでいる間、家族とどんな顔で話せばいいのかわからなくて、しんどい。籍を残すというのは、そうしたしんどさと付き合い続けることでもあります。

だから、そのしんどさから逃れるために「退学・休学をする」のも、選択肢の1つです。

思い出してほしいのは、今日の順番の話には、最初から条件がついていたことです。「もしも、いまの同級生と同じタイミングで卒業を目指したいなら」。逆にいえば、「高校卒業に3年以上かかってもいい」と思えているなら、この順番の話は、気にしなくていいんです。

私自身のスタンスも、書いておきます。中学までの義務教育とはちがい、高校からは、自分のペースで、自分が納得する進路を選ぶのがいい。長い人生を考えると、まわりとちがう道を歩く練習は、高校生からはじめたほうがいい。そう思っているので、高校卒業に3年以上かけるのも、ぜんぜんありだと思います。

大事なのは、順番を知らないまま選択肢が減ってしまうことと、知ったうえで自分のペースを選ぶことは、まったくちがう、ということです。同級生と同じ春に卒業したいなら、籍を残したまま探す。自分のペースでいくなら、先に離れてもいい。どちらを選んでも、知ったうえで選んだなら、それがその子の正解だと思います。

私が経営しているユイロ高等学院(通信制)にも、この時期に転校のご相談が増えます。籍を残したまま相談に来て、結局いまの学校に通い続けた子もいます。それでいいと、本当に思っています。

2学期を前に、いま「退学させてもいいですか」と迷っている方へ。まずは、目指したい卒業のタイミングから、親子で話してみてください。順番は、それから決めても間に合います。

今日も松下のブログを読んでくれてありがとうございます。サムネイルの「退学しない。」が命令形に見えていないか、公開ボタンを押すいまも、そわそわしています。順番の話だと、伝わっていますように。