「高校を辞めたい」と思ったら。退学の前に、転校先を決める
「いまの学校が合わなくて、高校の転校を考えています。学校がしんどそうなので、このまま退学させてもいいですか?」
夏休みの終わりが見えてくるこの時期、こうしたご相談が増えます。文面はいろいろですが、共通しているのは「本人がしんどそうだから、一日も早く楽にさせてあげたい」という気持ちです。
松下 雅征(まつした まさゆき)
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今日は、「このまま退学させてもいいですか?」というご相談に、お答えします。結論はシンプルで、「順番」の話です。 |
退学の前に、「休む」という選択
もしも、いまの同級生と同じタイミングで卒業を目指したいなら。退学や休学を決める前に、まず「学校を休む」という選択を考えてみてほしいんです。
ここでいう「休む」は、ふつうの欠席のことです。休学の届けを出すのではなく、籍はそのままにして、欠席する。
学校は休んだままでいい。籍だけ残して、転校先を探しはじめる。転校先が決まってから、いまの学校を離れる。この順番だと、卒業のタイミングを守りやすくなります。
大人の転職と、似ているんですよね。「次の職場が決まる前に、いまの会社を辞めないほうがいい」とよく言われます。辞めた瞬間に、収入が途切れるからです。高校の場合、途切れるのは「在籍期間」。あまり知られていませんが、これが卒業のタイミングを左右します。
休んでいても、在籍期間は続いている
高校を卒業するための条件は、全日制でも通信制でも共通です。
・在籍期間:3年以上
・単位修得:74単位以上
・特別活動(ホームルームや学校行事など):30単位時間以上
この3つです。
そして転校の場合、前の学校での在籍期間と修得した単位は、次の学校に引き継げます。2年生の秋に転校しても、1年生からやり直しにはなりません。前の学校で過ごした時間が、そのまま卒業までの持ち時間として数えられるんです。
ところが、転校先が決まる前に退学してしまうと、在籍が途切れます。退学してから次の学校に入るまでの空白の期間は、在籍期間として数えられません。休学も、学校によっては在籍期間の扱いが変わることがあります。その結果、同級生が卒業していく春に、在籍期間があと少しだけ足りない、ということが起こります。
同じ「学校に行かない」でも、「休む」と「退学・休学」では、あとに残るものがちがいます。教室に入らなくても、制服を着なくても、籍が残っている限り、在籍期間は続いています。だから、休んだままでいいんです。
転校を決める前に、探しはじめていい
もう1つ、知っておいてほしい原則があります。転校を考えはじめたら、動き出しは早いほうがいい、ということです。
多くの通信制の学校は、年度の途中からの転校を受け入れています。ただ、時期が遅くなるほど、その年度の単位を取るための条件が厳しくなっていきます。とくに3年生の後半になると、同級生と同じ春に卒業することが難しくなる学校が多くなります。
「まだ転校すると決めたわけじゃないし」と、動き出しをためらう方も多いです。でも、探すことと決めることは、別なんです。情報だけ先に集めて、「いざとなったら、ここに移れる」という状態をつくっておく。移るかどうかは、それから決めればいい。
学年別・時期別のくわしい仕組みは、『転校の教科書』(2026年5月29日発売)にまとめています。転校する人のための本というより、転校しない人も「こんな選択肢がある」と知っておくと気持ちが楽になる、という本です。
それでも、すぐにやめたい方へ
ここまで順番の話をしてきましたが、正直に言うと、私はこの話をするたびに、少し緊張します。「しんどくても籍だけは守って」という、我慢の話に聞こえていないかなと。だから最後に、この順番がしんどい方への話をさせてください。
「学校を休みながら、転校先を探す」。言葉にすると簡単ですが、休むのって、しんどいんですよね。
まわりは学校に行っているのに、自分だけ休んでいる。その状態そのものがしんどい。毎朝「今日は行く?行かない?」の葛藤をくり返すのがしんどい。休んでいる間、家族とどんな顔で話せばいいのかわからなくて、しんどい。籍を残すというのは、そうしたしんどさと付き合い続けることでもあります。
だから、そのしんどさから逃れるために「退学・休学をする」のも、選択肢の1つです。
思い出してほしいのは、今日の順番の話には、最初から条件がついていたことです。「もしも、いまの同級生と同じタイミングで卒業を目指したいなら」。逆にいえば、「高校卒業に3年以上かかってもいい」と思えているなら、この順番の話は、気にしなくていいんです。
私自身のスタンスも、書いておきます。中学までの義務教育とはちがい、高校からは、自分のペースで、自分が納得する進路を選ぶのがいい。長い人生を考えると、まわりとちがう道を歩く練習は、高校生からはじめたほうがいい。そう思っているので、高校卒業に3年以上かけるのも、ぜんぜんありだと思います。
大事なのは、順番を知らないまま選択肢が減ってしまうことと、知ったうえで自分のペースを選ぶことは、まったくちがう、ということです。同級生と同じ春に卒業したいなら、籍を残したまま探す。自分のペースでいくなら、先に離れてもいい。どちらを選んでも、知ったうえで選んだなら、それがその子の正解だと思います。
私が経営しているユイロ高等学院(通信制)にも、この時期に転校のご相談が増えます。籍を残したまま相談に来て、結局いまの学校に通い続けた子もいます。それでいいと、本当に思っています。
2学期を前に、いま「退学させてもいいですか」と迷っている方へ。まずは、目指したい卒業のタイミングから、親子で話してみてください。順番は、それから決めても間に合います。
今日も松下のブログを読んでくれてありがとうございます。サムネイルの「退学しない。」が命令形に見えていないか、公開ボタンを押すいまも、そわそわしています。順番の話だと、伝わっていますように。
この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡市在住。一児の父。早稲田実業学校高等部を首席で卒業後、米国へ留学。早稲田大学政治経済学部卒業。偏差値の一本道しか知らなかった学生時代。漫画家になる夢を手放した当時の違和感が、のちの起業の原点となる。教育系上場企業、コンサルティング会社を経て、2022年に株式会社ユイロを創業。「進路は、選び直せる。」をビジョンに掲げ、全国から転校できる通信制高校サポート校「
ユイロ高等学院」、月額定額のオンライン教育サービス「
勉強を教えない家庭教師」などを展開。
慶應義塾大学名誉教授・武蔵野大学ウェルビーイング学部長である前野隆司教授との共同研究により、自律度を見える化する独自のキャリア教育メソッド「ユイロ式自律度診断」を開発。
著書『13歳からの進路相談』シリーズ(すばる舎)は累計1.8万部超、全国の学校や図書館で多数採用。2作目『13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編』は紀伊國屋書店 総合週間ランキングで玉川高島屋店1位、新宿本店2位を獲得。2026年5月にはシリーズ3作目『転校の教科書』を発売。
東京・世田谷で小中学生向けの無料プログラミング部活動を展開する一般社団法人セタプロ・代表理事を務める。
著書:『
13歳からの進路相談(すばる舎)』、『
13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』、『
転校の教科書(すばる舎)』
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