「定時制高校」と聞くと、昼に働いて夜に通うというイメージを持つ人も多いでしょう。
実際、働きながら学ぶ勤労青年の学びを支える教育機関として設立された背景もあります。
一方、最近では定時制に在籍する生徒の背景は大きく多様化しており、期待される役割も変化しています。
13歳からの進路相談 著者
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本記事では、定時制高校の基本、歴史的背景、そして“いまの目的”を、書籍『13歳からの進路相談』著者であり、通信制のユイロ高等学院 学院長の松下が解説します。 |
目次[非表示]
- 1.定時制高校の概要
- 2.定時制高校の歴史的背景
- 3.定時制高校ーいまの目的
定時制高校の概要
高等学校は制度上、「全日制の課程」または「定時制の課程」を基本に置きつつ、加えて「通信制の課程」を置くこともできるとされています。つまり定時制は、全日制と並ぶ“高等学校の課程”の一つです。 (*1)
また、高等学校そのものの目的は、学校教育法で「中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すこと」と整理(*2)されています。定時制も、その目的に基づく高等学校教育である点が前提になります。
修業年限について、法令上は全日制が3年、定時制・通信制は「3年以上」とされています(制度としては、学び方に合わせた設計が可能)。 (*3)
定時制高校の歴史的背景
定時制は、発足当初から「中学校を卒業して勤務に従事するなど種々の理由で全日制の高等学校に進めない青少年に対し、高等学校教育を受ける機会を与える」制度として説明(*4)されています。
つまり“働く(あるいは働きながら学ぶ)青少年の教育機会を保障する”ことが、制度設計の中核でした。
制度面でも、当初は「夜間に授業を行う課程」と「特別の時期・時間に授業を行う課程」に区別され、修業年限は3年を超えることができる扱いでしたが、その後の法改正で一本化され、定時制課程として修業年限を「4年以上」とした経緯があります。 (*4)
重要なのは、定時制が“全日制の簡易版”として設けられたのではないという点です。定時制は「全日制の課程と同等の教育を施し、同一の資格を与える」ものとして位置づけられています。 (*4)
定時制高校ーいまの目的
現在、定時制の目的は変わったのでしょうか。
結論から言えば、「勤労青年のため」という原点は残りつつも、下記3点の変化がありました。
- 働きながら学ぶ人のための“教育機会の保障“
- 学び直しや中退・不登校等を経験した人が「高校教育へ戻る」ための受け皿
- 多様な学習形態(遠隔・通信の活用等)も含めて、一人ひとりの状況に合わせて学びを設計する拠点
中央教育審議会の検討資料では、定時制・通信制には勤労青年のみならず、全日制の中退者、不登校経験のある生徒、外国籍生徒、精神疾患や発達障害など特別な配慮を必要とする生徒等、多様な背景の生徒が在籍していることが明記されています。(*5)
ここから読み取れるのは、定時制が「時間帯の都合」だけではなく、「学びを続ける環境」そのものになっている、という事実です。
さらに近年は、不登校生徒の学習機会確保という観点から、全日制・定時制における遠隔授業(同時双方向型の受講など)や通信教育の活用を進める方向性が、文部科学省の通知等で示されています。(*6)
これは、“登校を前提にしない学び方”を制度面から後押しする動きであり、定時制が担ってきた「個別事情に応じて学びを成立させる」役割と親和性が高いアップデートだと言えます。
改めて、定時制高校という教育機関が持つ、いまの目的を整理します。
1つ目は、働きながら学ぶ人のための“教育機会の保障”。2つ目は、学び直しや中退・不登校等を経験した人が「高校教育へ戻る」ための受け皿。3つ目は、多様な学習形態(遠隔・通信の活用等)も含めて、一人ひとりの状況に合わせて学びを設計する拠点です。
定時制高校はもともと、全日制に進めない(特に勤労している)青少年に高等学校教育の機会を与えるために設けられ、全日制と同等の教育・資格を前提に発展してきました。
そして現在は、在籍する生徒の背景が多様化し、学び直しや不登校経験等を含む“学びの再接続”を支える役割がより前面に出ています。
制度面でも遠隔授業等を含む学習機会を確保する動きが進んでいて、定時制は「夜に通う学校」から、「学びをつなぎ直す学校」へと、役割を広げているのです。
*1 「学校教育法(昭和22年3月31日法律第26号) 第54条」文部科学省
*2 「学校教育法(抄) 高等学校の目的 第50条」文部科学省
*3 「学校教育法(昭和22年3月31日法律第26号) 第56条」文部科学省
この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡県福岡市在住。一児の父。株式会社ユイロ代表取締役社長。著書『13歳からの進路相談』シリーズは累計 16,000部突破。続々と重版されてロングセラーとなり、全国の学校や市区町村の図書館で多数採用されている。
学生時代は早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値を基準に進路を選び後悔した経験をきっかけに、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げる。これまでに寄せられた中高生からの相談は10万件を超える。大学卒業後は教育系上場企業とコンサルティング会社で勤務。
2022年に株式会社ユイロ創業、代表取締役に就任。一人ひとりが自分らしい進路を選べる社会を目指し、「
ユイロ高等学院(通信制)」を創立。「学校のふつうをなくした選び直せる学校」を掲げ、全国の高校から転校生を受け入れ。高校卒業だけではなく、その先のキャリア支援も行っている。
著書:『
13歳からの進路相談(すばる舎)』、『
13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』(紀伊國屋書店 総合週間ランキング 玉川高島屋店1位、新宿本店2位)
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