転校を検討する方にとって、最も気になるのは転校に伴う費用負担でしょう。
新しい高校で必要となる学費(授業料)や入学金、さらには教材費や制服代など、経済的な不安は大きいものです。
13歳からの進路相談 著者
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本記事では、公立・私立を問わず高校転校で発生する主な費用項目をわかりやすく解説し、あわせて実際に転校した保護者の声と、学費負担を軽減できる就学支援金制度(国の高校授業料無償化策)について、書籍『13歳からの進路相談』著者であり、通信制のユイロ高等学院 学院長の松下が解説します。 |
転校で必要となる主な費用
高校を転校する際に新たに発生する代表的な費用には、以下のようなものがあります。
入学選抜料(受験料)
転校先の学校で転入学試験がある場合、その受験料が必要です。
公立高校では全日制2,200円、通信制・定時制960円と設定されている都道府県が多いです。
一方、私立高校では学校ごとに異なりますが、全日制の平均は17,306円です(*1)。
入学金(入学料)
転校先に入学する際、入学金の納入が必要です。
公立高校の入学金は、全日制5,650円、定時制2,100円、通信制500円です。
一方、私立の全日制高校では平均165,898円の入学金が必要です(*1)。入学手続き時に支払う必要があり、私立の場合は併願で入学辞退しても返金されないケースもあるため注意が必要です。
授業料(学費)
在籍期間の授業料は公立か私立か、全日制か定時制・通信制かによって異なります。
公立全日制高校の授業料は法律で月額9,900円、通信制(単位制)では1単位あたり300円程度、定時制(単位制)では1,700円程度となります(*2 *3 *4)。
私立高校の授業料は学校によって差がありますが、全日制の場合では平均は457,331万円です(*1)。私立通信制では年間で平均246,000円ほどかかります(*5)。
さらに私立高校では授業料以外に施設設備費等の名目で初年度に追加の納付金が課され、平均72,000円(施設設備費 33,000円+その他 39,000円)が必要です(*5)。
公立高校にはこのような施設費の負担はありませんが、私立ではこれらを含め初年度の学費が高額になる傾向があります。
教材費(教科書代など)
転校に際して新しく必要となる教科書・教材の購入費用も発生します。
文部科学省の調査によれば、教科書等(図書・学用品・実習材料費等)にかかる費用は公立・全日制では年間62,292円、私立では74,565円となっています(*6)。
転校先で使用する教材が現在の学校と異なる場合、新たに購入が必要となればその費用がかかります。
制服代・その他の諸費用
学校指定の制服や体育着、カバン、上履きなどの購入費も転校時に必要です。
公立・全日制高校では制服代に数万円を要するのが一般的で、私立ではデザインや品質によってさらに高額になる傾向があります。
加えて、PTA会費や後援会費、修学旅行積立金などの学校納付金も転校後に新たに必要となる場合があります。
こうした費用も合わせると、公立・全日制高校では130,564円(教科外活動費 39,395円+通学関係費91,169円)、私立では176,168円(教科外活動費 47,013円+通学関係費129,155円)かかるという調査もあります(*6)。
実際に転校した保護者の声
先日、実際に全日制高校から通信制高校へ転校した生徒のお母様にお話を伺ったのですが、転校時の経済的な痛みについて、とても率直に教えてくれました。
「転校するにあたって、一番残念に感じたのは、無駄になってしまう初期費用が我が家にとって高額だったことでした。
制服の買い直しはもちろん、入学金、指定の通学バッグやローファー、さらにはiPadやキーボード、教科書一式……。ローファーが規則でしたが、どうしても足に合わなくて、結局その後は使えませんでした。前の学校で揃えたばかりのものが無駄になるのは、やはり心苦しいものです。
不登校が長く続くと、給食や学校サービスの恩恵を受けられないのに、家での食費やケアの費用はかさみます。その中で転校の費用を捻出できたのは、たまたま運良く生活に少しの余裕があったから。もしそうでなければ、子どもの機会損失になっていたかもしれません。費用の大きさは、転校の本当に大きなハードルになると痛感しました。」
このお母様の言葉にある「無駄になってしまう費用への残念さ」は、多くの保護者の方が抱く共通の思いでしょう。
しかし同時に、実際に転校したお子さんは、学校を変えたことで、これまでのストレスから解放され、現在はイキイキと高校生活を送っているとのことです。
学費負担を軽減する就学支援金制度
高校転校に伴う経済的不安を和らげるため、国の高等学校等就学支援金制度(高校授業料無償化)を活用することもできます。
高等学校等就学支援金制度は、年収約910万円未満の世帯を対象に国が授業料の一部または全額を支給し、高校教育の経済的負担を軽減する制度です。
公立高校では年間118,800円が支給されるため授業料は実質無償になります。私立高校では年収約590万円未満の場合は年間396,000円、590~910万円の場合は年間118,800円が支給されます。(ただし共働きか否かなどで条件が異なるため要確認)
就学支援金を受けるには毎年度の申請が必要で、通常は入学時に学校を通じて書類を提出します。申請が認められれば、支援金は学校が代理で受領して授業料に充当されるため、保護者にはその分の授業料請求が行われません。
*1 「令和6年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果について」文部科学省
*2 「高校生等への修学支援 高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」文部科学省
*4 「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について」東京都教育委員会
この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡県福岡市在住。一児の父。株式会社ユイロ代表取締役社長。著書『13歳からの進路相談』シリーズは累計 16,000部突破。続々と重版されてロングセラーとなり、全国の学校や市区町村の図書館で多数採用されている。
学生時代は早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値を基準に進路を選び後悔した経験をきっかけに、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げる。これまでに寄せられた中高生からの相談は10万件を超える。大学卒業後は教育系上場企業とコンサルティング会社で勤務。
2022年に株式会社ユイロ創業、代表取締役に就任。一人ひとりが自分らしい進路を選べる社会を目指し、「
ユイロ高等学院(通信制)」を創立。「学校のふつうをなくした選び直せる学校」を掲げ、全国の高校から転校生を受け入れ。高校卒業だけではなく、その先のキャリア支援も行っている。
著書:『
13歳からの進路相談(すばる舎)』、『
13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』(紀伊國屋書店 総合週間ランキング 玉川高島屋店1位、新宿本店2位)
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