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『転校の教科書』は、転校しない人のために書きました

5月29日に、『転校の教科書~学校にモヤモヤを感じたら読む本』という本が出ます。
すばる舎さんから出していただく、私にとって3冊目の本です。

転校の教科書

漫画家の川口真目さんに描いていただいたカバーイラストがお気に入りです)

ただ、書店に並ぶ自分の本を見るたびに、ちょっと信じられない気持ちになるんですよね。ちゃんと並んでいる…というか、フワフワした感覚というか。いまだに慣れません。3冊目なのに。

これまで書いた13歳からの進路相談シリーズは、タイトル通り、これから進路やキャリアを考える方に向けて書いた本でした。

 松下 雅征(まつした まさゆき)

でも、『転校の教科書』は「転校する人」のために書いた本ではないんです。

 

転校する人の本だと思われがちなんだけど

タイトルが『転校の教科書』なので、「今すぐ転校を考えている人」が読む本だと思われてしまうんですよね。

でも、私が一番届けたかったのは、そういう方ではなくて。

「今、学校には通えている。でも、なんとなくモヤモヤしている」
「転校するほどじゃない。けど、ちょっと合わないなあ」

そう思っている、ふだんは「ふつうに登校している」子と、保護者のほうなんです。

会社を変える「転職」は当たり前になっている

ちょっとイメージしてみてほしいんですけど、会社で働く大人の世界では、会社を変える「転職」って、もうふつうのことになっていますよね。

転職サイトに登録だけはしている、っていう人、けっこういると思うんです。実際に転職するつもりはなくても、なんとなく登録しておく。

すると、他社からスカウトなんか来たりすると、不思議なことが起きるんです。

「ほかの会社も選べるけど、自分は今の会社で働いている」って思える。

嫌な上司がいても、しんどい仕事があっても、「ここを選んでいる自分」として、もう一日、踏ん張れる。選択肢があるって知っているだけで、目の前のことを続ける力になる

これって、自分の意志で「ここにいる」を選び直しているからなんですよね。

「ここしかない」って思った瞬間が、いちばんしんどい

ところが、子どもたちには、その感覚がない子が多くて。

「この学校にしか通えない」

「ここに通うしかない」

と、選択肢がひとつしかないように感じてしまう。

学校を変える転校は、まだまだ当たり前の選択肢じゃないんだと思います。

実際、転職の本はたくさんあるのに、転校の本は、ほとんどなくて。

出版社からも「ここまで転校について真正面から扱う本は、たぶん日本で初めてじゃないですか」と言われました。そのくらい、ふつうじゃないこと、だったんじゃないかなと思います。

ただ、人間って、「ここしかない」と思った瞬間に、ストレスが一気に強くなる生き物なんですよね。逃げ道がない、選び直す道がない、と感じることそのものが、しんどい。

実は、ユイロに転校してきた生徒のなかに、こんな子たちがいるんです。

  • サッカー推薦で高校に入った。けど、勉強に専念したくて部活を辞めたい

     

  • 中学受験で第一志望の中高一貫校に入った。けど、学校が合わなくて辞めたい

ちらも、本人のなかでは答えが出ているのに、動けないんですよね。

「せっかく推薦で入ったのに」「せっかく受験で入ったのに」という気持ちが、足を止める。そして、動けないと思った瞬間に、しんどさが何倍にも膨らんでしまう。

成績が落ちたとか、友だちと揉めたとか、そういうことよりも先に、「ここから動けないと思い込むこと」が、子どもたちを追い詰めていたんです。

転校は、お守りになる

だから、この本では「転校は、お守りになる」ということを伝えたかったんです。

転校するかしないかは、究極的には、どちらでもいい。

ただ、「いざとなれば転校できる」「ほかにも選択肢がある」と知っていることが、今の学校生活そのものを、ちょっと楽にしてくれる。

転校する子のための本ではなく、転校という選択肢を、お守りとして手元に持っておくための本

それが、『転校の教科書』を書いた、いちばんの理由です。

ユイロが大切にしている「選び直せる」という前提

ユイロでは、子ども一人ひとりのちがいを大切にする教育を考えています。

ちがいって、本人や家族にとっては、ときに「合わなさ」として現れるんですよね。今の学校が合わない、今の環境が合わない。それは劣っているんじゃなくて、ただ「ちがう」だけ。

そしてそのちがいを大切にするためには、「選び直せる」という前提が要るんです。学校を選び直せること、家庭での関わり方を選び直せること、進路を選び直せること。

『転校の教科書』は、その「選び直せる」ことの、最初の入口として書いた本です。

転校するかしないかは、読んでから決めたらいい。

読み終わったときに、「お守りができたなあ」と感じてもらえたら、私がこの本を書いた意味があります。


今日も松下のブログを読んでくれてありがとうございます。実は本のタイトル、「転校できるは、お守りになる。」っていう案もあったんですよね。最後の最後で『転校の教科書』に決まったんですけど、個人的には今もちょっと引きずっています。本のなかに、こっそりと、このメッセージを残しています。


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この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
松下 雅征/Matsushita Masayuki
13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長

1993年生まれ。福岡市在住、一児の父。早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。偏差値のレールを走った学生時代。それでも消えなかったのは、漫画家になる夢を手放した中学時代の違和感。この原体験が、のちの起業の原点となる。教育系上場企業、コンサルティング会社を経て独立。「ちがいを、描け。」をミッションに掲げ、2022年に株式会社ユイロを創業。同年、 ユイロ高等学院を創立。2026年4月に月額定額型の新サービス「 家庭教師のユイロ」をリリース。「選び直せる学校」や「勉強を教えない家庭教師」を通じて、一人ひとりのちがいを起点に進路を描く新しい教育の文化づくりに取り組む。
慶應義塾大学名誉教授・武蔵野大学ウェルビーイング学部長である前野隆司教授との共同研究により、自律度を可視化する独自メソッド「ユイロ式自律度診断」を開発。
著書『13歳からの進路相談』シリーズ(すばる舎)は累計16,000部突破、全国の学校や図書館で多数採用。2作目『13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編』は紀伊國屋書店 総合週間ランキングで玉川高島屋店1位、新宿本店2位を獲得。2026年5月29日にはシリーズ3作目『転校の教科書』を発売予定。
東京・世田谷で小中学生向けの無料プログラミング部活動を展開する一般社団法人セタプロ・代表理事を務める。
著書:『 13歳からの進路相談(すばる舎)』、『 13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』、『 転校の教科書(すばる舎)