今朝のミーティングで、ある生徒たちの話を聞いていました。
ひとりは、スポーツ推薦で高校に入ったけれど、周りのレベルの高さに圧倒されて自信を失ってしまった子。もうひとりは、音楽が得意だったけれど、進学先で上には上がいることを思い知らされ、楽器を触るのが怖くなってしまった子。
「ああ、その感覚、すごくよく分かるなあ」と、画面越しに頷きながら、ふと、自分自身の高校時代のことを思い出していました。
松下 雅征(まつした まさゆき)
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今日は、かつての私と同じように、「井の中の蛙」が大海を知って溺れかけている、そんなあなたへ手紙みたいなものを書いてみようと思います。 |
試合開始のゴングが鳴る前に
私自身、中学生は、いわゆる「優等生」でした。通知表はオール5。先生からも褒められ、中学校代表として、指定校推薦で早稲田実業学校高等部に入学したんです。
でも実は、入学式の門をくぐる前から、私はすでに白旗を上げていました。
現在はどうなっているか分かりませんが、当時の早稲田実業の生徒といえば、全国模試でトップクラスの成績を取る「一般受験組」や、テレビで見るような大会に出ている「スポーツ推薦組」が大多数を占めていました。
彼らは、高性能なエンジンを積んだスポーツカーみたいに見えました。対して私は、必死にオールを漕いでいる手漕ぎボート。
「よーいドン」で走り出したとしても、逆立ちしたって勝てない。15歳の私は、入学前から自信を喪失していたんです。
「組長」という生存戦略
じゃあ、そこで私が腐ってしまったかというと、そうではありません。「勉強でも勝てない、スポーツでも勝てない。なら、どこなら勝てるだろう?」と、必死に「自分が勝てる場所」を探しました。
そして迎えた、入学直後のホームルーム。自己紹介タイムで、なぜか私は全員に向かってこう宣言したんです。
「組長(学級委員)に立候補します!」
なんとなく、周りがざわついたのを覚えています。でも、私にはそこしかなかった。
真面目に授業を受けるとか、先生とコミュニケーションをとるとか、そういう「生活態度」という土俵なら、天才たち相手でも戦えるかもしれない。指定校推薦だからこそできる「優等生キャラ」というポジションを、戦略的に、必死に確保しにいったんです。
これは、「キャリアのABC」でいうところの「Area(環境)」と「Character(自分)」の調整です。「偏差値」や「競技力」という単一のモノサシで戦うのが怖いから、「自分が勝てる(あるいは、苦にならない)モノサシ」を自分で持ち込んだわけです。
逃げ道は、賢い「戦略」になる
自信を失っている生徒に対して、ユイロ高等学院では、よくこう伝えます。「他人と比べるのはやめて、過去の自分と比べよう」と。
ありふれた言葉に聞こえるかもしれませんが、これが本当に大事なんです。天才たちと比べて「自分はダメだ」と落ち込むよりも、「昨日の自分より、ここができるようになった」と認めてあげること。
そうやって、自分なりの「成長のモノサシ」を持つことができれば、どんなに凄い人たちの中にいても、自分を見失わずに済みます。
ユイロ高等学院が、「診断」や「対話」を大切にしているのは、そのためです。偏差値や順位といった「他人軸」の評価ではなく、その子だけの「自分軸」の成長を、一緒に見つけて、喜んであげたいからです。
それは決して「諦め」ではなく、自分らしく生きるための、賢い「戦略」なのだと思います。
今日もユイロのブログを読んでくださりありがとうございます。
組長を3年間やり続けた結果、高校時代のあだ名はずっと「組長」でした。
この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡県福岡市在住。一児の父。株式会社ユイロ代表取締役社長。著書『13歳からの進路相談』シリーズは累計 16,000部突破。続々と重版されてロングセラーとなり、全国の学校や市区町村の図書館で多数採用されている。
学生時代は早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値を基準に進路を選び後悔した経験をきっかけに、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げる。これまでに寄せられた中高生からの相談は10万件を超える。大学卒業後は教育系上場企業とコンサルティング会社で勤務。
2022年に株式会社ユイロ創業、代表取締役に就任。一人ひとりが自分らしい進路を選べる社会を目指し、「
ユイロ高等学院(通信制)」を創立。「学校のふつうをなくした選び直せる学校」を掲げ、全国の高校から転校生を受け入れ。高校卒業だけではなく、その先のキャリア支援も行っている。
著書:『
13歳からの進路相談(すばる舎)』、『
13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』(紀伊國屋書店 総合週間ランキング 玉川高島屋店1位、新宿本店2位)
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病院でもない。学校や塾でもない。