「転校は特別」「うちだけが例外」——転校を考えている、あるいは転校を決めた方の多くはこのように感じているかもしれません。しかし、いま日本の転校をとりまく”数字”を見ると「学ぶ環境を変える選択」は当たり前の時代に入っているという事実が見えてきます。
通信制のサイル学院長
|
本記事では、データを元に「転校は特別ではない」という事実を進路相談のプロ(書籍「13歳からの進路相談」著者)であり、通信制のサイル学院高等部 学院長の松下が解説します。 |
「学ぶ環境を変える」が当たり前の時代
まず押さえたいのは、学校以外の学びの場や、これまでとは違う学校の通い方が年々広がっているということです。例えば、2019年から自宅学習や学校外施設の学習を「出席扱い」とする決まりが制定されて以降、外部機関や自宅学習により出席扱いとなった小中学生が2022年度に計約4.3万人(*1)にも上ります。
文部科学省が毎年実施する統計調査では、2024年度に通信制高校の在籍者が29万人超(高校生のおよそ1割、約10人に1人が通信制高校に通う計算)で過去最多(*2)と報じられました。全日制高校に通う生徒数が減る一方、通信制高校に通う生徒数は9年連続で増加し、学校数も303校と最多に。柔軟な通学方法や個に合わせた学びが広く支持を得るようになってきました。
近年では角川ドワンゴ学園のN高・S高の在籍が3万人突破(2024/8時点)。大規模化が進み、2025年には3校体制(R高)へ拡張しているといった例もあります。
全国的に校内外の居場所整備が急ピッチに
小中学校の段階でも「学校に通う=同じ教室でフルタイム」という一択ではなくなってきています。不登校の小中学生は2023年度に34万6,482人で過去最多(11年連続増)(*3)。学校外や別室・別形態で学ぶ必要がある子どもが増えているということです。
国はこれを受けて、「誰一人取り残されない学びの保障(COCOLOプラン)」を掲げ、校内外の居場所整備を急ピッチで進めています(*4)。
その象徴が、”学びの多様化学校”(旧称「不登校特例校」)の拡大。2024年度の35校から、2025年度は23校新設され、全国で58校規模となりました(*5)。少人数・個別化・始業時刻の柔軟化など、子どもに合わせたカリキュラムを提供する学校が全国で一気に増えているのです。
転校や学びの場の変更は現実的な選択肢へ
ここまでの流れを“転校”という文脈で整理してみます。
- 小中段階では、在籍はそのままでも「教育支援センター(不登校生徒の学校復帰を支援する施設)」「フリースクール(何らかの理由で学校に通えない生徒のための民間施設)」「通級(一部の授業を別の教室で受けること)」「校内教育支援センター」など環境を切り替えて学ぶルートが広がり続けています。さらに“別の公立校”で柔軟に教育を受けることのできる学びの多様化学校という公教育内の受け皿が広がり、転校を含む選択の幅が増えています。
- 高校段階では、全日制高校から通信制高校、定時制高校から通信制高校といった課程を越えた転校(転入・編入)を前提にした選択肢が定着。転校=特別扱いではなく「学ぶ環境の再選択」として認識され始めています。
ただし、全国横断で「転校件数そのものが増えている」と示す一次統計はおそらくありません。(私は見つけることができませんでした。)国の統計調査(学校基本調査)には小中学校の「転入学件数の年次推移」は載っていません。でしたが、おそらく、自治体ごとの公表の仕方がまちまちで、調査そのものが困難だからでしょう。
しかし、“転校や学びの場の変更を現実的に考える人が増えている”ことは、ここまで記載してきた通信制高校・学びの多様化学校の増加という社会の変化からから間違いないでしょうし 、転校を考える人はこれからの時代ますます増えていくと思います。
転校や、学ぶ環境を変えることが当たり前になる時代がくる、というのは、データも示しています。
ですから、「学校を変えたい、なんて思っているのは自分だけだろうか」と不安を抱える方には、そんなことはない、と伝えたいです。
*1 「不登校児童生徒の学校外や自宅での学習 成績評価への反映を法令化」教育新聞
*2 「高等学校(通信制)の学校数・生徒数及び教職員数」令和7年度 学校基本調査 文部科学省
*3 「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」 文部科学省
この記事を書いた人

13歳からの進路相談 著者/ユイロ高等学院 学院長
1993年生まれ。福岡市在住、一児の父。早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。偏差値のレールを走った学生時代。それでも消えなかったのは、漫画家になる夢を手放した中学時代の違和感。この原体験が、のちの起業の原点となる。教育系上場企業、コンサルティング会社を経て独立。「ちがいを、描け。」をミッションに掲げ、2022年に株式会社ユイロを創業。同年、
ユイロ高等学院を創立。2026年4月に月額定額型の新サービス「
家庭教師のユイロ」をリリース。「選び直せる学校」や「勉強を教えない家庭教師」を通じて、一人ひとりのちがいを起点に進路を描く新しい教育の文化づくりに取り組む。
慶應義塾大学名誉教授・武蔵野大学ウェルビーイング学部長である前野隆司教授との共同研究により、自律度を可視化する独自メソッド「ユイロ式自律度診断」を開発。
著書『13歳からの進路相談』シリーズ(すばる舎)は累計16,000部突破、全国の学校や図書館で多数採用。2作目『13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編』は紀伊國屋書店 総合週間ランキングで玉川高島屋店1位、新宿本店2位を獲得。2026年5月29日にはシリーズ3作目『転校の教科書』を発売予定。
東京・世田谷で小中学生向けの無料プログラミング部活動を展開する一般社団法人セタプロ・代表理事を務める。
著書:『
13歳からの進路相談(すばる舎)』、『
13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』、『
転校の教科書(すばる舎)』
前の記事
データから分かる通信制高校の進路|進路未定を避ける3ポイントも解説
次の記事
なぜ選択肢は高校から大きく広がるのか(義務教育と学区の仕組み)